パイロット
座談会
ブルーインパルスには様々なバックグラウンドを持ったパイロットが集まり、展示飛行の成功に向かって、日々の訓練に励んでいる。航空祭などでしか会うことのできないパイロットたちは日々どんなことを考えているのだろうか。今回は、5番機で広報を務める河野3佐と、今年度がラストイヤーとなる3番機の久保1尉、そしてデビューを目前に控えた4番機TR(訓練要員)の永岡1尉の3名に話を伺い、それぞれの素顔に迫った。
ブルーインパルス2020
- Q ブルーを志した理由について教えてください
- 河野:私は浜松の第32教育飛行隊に所属し、パイロットの飛行教官をしていました。それまではずっと戦闘機を操縦していたので、新しいことをやってみたいという思いと、小さい頃からブルーに憧れていたこともあり、チャンスがあれば行ってみたいと思っていました。
久保:私もブルーに小さい頃から憧れていたということもありますが、実は元々両親にこの世界に入ることを反対されていました。そのため、自分の仕事をしているところを見てもらえると思い、恩返しの意味も込めてブルーを希望しました。今では…すっかり大ファンですね。
河野:確かに、久保のご家族よく航空祭で会うよね(笑)。
永岡:私は百里基地の第301飛行隊でF‐4を操縦していました。初めてブルーインパルスを見たのは新田原基地の航空祭。その時の感動から、こういう舞台で自分も飛んでみたいという気持ちになり志願しました。まさか自分がなれるとは思っていなかったですけどね。 - Q 他の部隊とブルーの違いはどんなところに感じますか?
- 久保:一番の違いは、一人一人が自分の意見をきちんと言えるところですかね。規律を守りながらも、みんなで柔軟に対応していけるのはブルーならではの良さだと思います。パイロットも整備も総括も、距離感が近く、みんなが同じ目標に向かって進んでいるので、任務達成や安全とかも含めて意識統一しやすい環境ですね。
河野:そういう点だとプライベートでもメンバー同士で結構仲良く過ごしてますね。有志でキャンプに行ったりとか。戦闘機部隊と比べて人数も少ないし、チームワークが特に大切な仕事なので、地上でお互いのことをよく知ることも大事になってきます。
永岡:ちなみに戦闘機部隊だったら5つ上の先輩ともなれば、結構怖いですね(笑)
河野:率直な意見を言い合えることが、互いの成長に繋がることになると思うので、日頃から話しやすい関係を築くことは心掛けています。前提として、ブルーに配属される人は気を遣える人が多い気がします。相手の性格を考えて伝えられる人が多いので、そういった点も良い方向に働いているんだと思います。
永岡:確かに、先輩の一つ一つの動作は日頃から良く観察しているかもしれません。「今日は調子が悪そうだな」とか結構気にかけて話しますよ。
河野:ちなみに永岡は基本的にいつも元気だけど、ナイーブなところがあるよね(笑)。だからこそ、元気がなさそうな時は気にして声かけるようにしてます。
久保:僕は結構人の顔を良く見るタイプなので、気付きやすい方だと思ってます。伝え方はその人に応じて考えますね。
春、ブルーインパルスの新シーズンがスタートした。今年度でラストシーズンを迎えるメンバーも、
今年デビューするメンバーも、展示飛行できることを願っている - Q 2019年はどのようなシーズンでしたか?
- 河野:昨年はT‐4の飛行見合わせがあり、訓練ができない期間が非常に長かったですね。ブルーは、特殊な飛行をすることが多いので、1日飛ばないだけでも感覚が鈍ってしまったりするので、もどかしさは強かったですね。ただ、悩んでも仕方ないので前向きにできることに向き合っていました。訓練再開後は、飛べることの嬉しさを改めて実感し、当たり前に飛べることに感謝できた良いシーズンだったと今では思っています。
久保:私はOR(展示要員)になって2年目でしたが、OR資格をとったからといってすぐに完璧に飛行できるわけではありません。自分なりのベストなやり方を模索し続け、研究を重ねたシーズンだったかなと思っています。飛行停止期間中は、市販のDVDを見たりしてお客さん目線でのイメージも膨らませました。部隊内では、自分にできることは何かないかなと思い、英語の教育資料を作ってみたりもしましたね。
永岡:2019年はナレーションがメインだったので、そこを特に頑張りましたね。河野3佐からは訛りを無くせ!と言われたので、意識して何度も練習をしました。今はだいぶ良い感じになってる…はずだと思います(笑)。訓練に関してはTR(訓練要員)期間ということもあり、身体に感覚が染み付いてない中、訓練期間が空いてしまうことが大変でしたね。フライト毎に思い出しながら飛んでいく感じだったので、技量を上げていくところが悩ましかったです。
久保:あとは、展示飛行を振り返ると9月の小松基地の航空祭で6機飛べたのは嬉しかったですね。そこまでに決めていたこととしては、機数が少ない中でのウォークダウン/バックは無しにして、必ず6機揃ってからやろうとしていました。久しぶりに全機揃って展示飛行できた時のことは思い出深いですね。
ブルーインパルスは、一人一人が意見を言いやすい雰囲気作りを意識しており、結果としてそれが安全に貢献している
- Q 最後に今年の豊富を教えてください!
- 河野:シーズンが始まった際には、サイン会などでファンの皆さんに会えることを楽しみにしています。今年も最高の展示飛行をお見せしたいですね。しっかりと安心できる展示飛行はできていると思うので引き続き頑張ります。ブルーインパルス創設60周年という記念の年ということもあり、受け継いできた伝統も見せつけたいと思ってます。私の仕事の一つである広報としては、今年はもっとメンバーを巻き込みたいですね。手始めに、着任したばかりのメンバーなんかを巻き込んで、化学反応を起こしながら新しい広報活動に挑戦したいと思います。
久保:今年は、3年目の最後の年ということもあり〝感謝と継承〞の一年にしたいですね。お世話になったチームのメンバーや、応援してくれたファンの皆さんに感謝を込めて、精一杯のフライトをすること。そして、後任も着任しましたのでいち早くORとしてデビューさせてあげられるようにしっかり継承できる一年にしたいと思います。
永岡:私はまだTRとして訓練しているので、師匠がいる環境の中で、できる限り同じレベルまで到達できるように、日々小さいことを積み重ねて技量を上げていきたいと思います。あとは、多くの人たち、特に子ども達に興味を持ってもらえるように広報活動には積極的に関わっていきたいですね。河野3佐と一緒に化学反応を起こしますよ