飛行隊長・飛行隊長付
Wインタビュー
2020年4月で創立60周年を迎えたブルーインパルス。
航空自衛隊の広報部隊として全国各地で活動を行い、
約40名のメンバーを率いる隊長 福田哲雄2佐と、
次期隊長を担う飛行隊長付 遠渡祐樹2佐に話を伺った。
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飛行隊長、1番機(OR)、着隊4年目
- 福田 哲雄ふくだ・てつお
- 2等空佐
TACネーム:TETSU(テツ)
趣味:鉄道全般、テニス -
飛行隊長付、1番機(TR)、着隊2年
- 遠渡 祐樹えんと・ゆうき
- 2等空佐
TACネーム:CHERRY(チェリー)
趣味:アウトドア、ドライブ
- 苦難を力に変えて
深まったチームの絆 - 昨年のインタビューで「飛行隊長としての〝責任〞と向き合い、チームの絆を強くしたい」と語った福田隊長。2019シーズンは責任を果たした一年だったと振り返る。
福田 「大きな事故もなく、最も大切にしていた〝安全〞については責任を果たす事ができたと思っています。ただそれは、私だけの力だけではなく、みんながプロとして意識を高めてくれたから成し遂げられたことです。メンバーの一人一人がそういった意識を持てる環境作りも私の責任だと思うので、そういった意味ではメンバーに助けられて責任を果たせた1年間でした」 - 任期3年目としては、隊長の在籍期間が長くなることでメンバーが言いづらいことが出てきてしまうことも考慮し、〝裸の王様〞にならないことを意識していたと言う。「上空でも地上でも思った事や意見はみんな素直に言ってくれていたかなと思う」とコミュニケーションが活性化したチームの様子を笑顔で振り返った。
- 一方、昨シーズンを語る上で2019年4月からのT‐4の飛行停止という苦難も注目すべき事象の一つだ。
福田 「T‐4の飛行停止はシーズンスタート直後でした。飛べない時期があったことで、逆にチームの絆が強くなったことも感じています。危機に直面したときだからこそ、自衛官として今自分達にできる事を真剣に考えました。第11飛行隊として、メンバー・パイロット・整備など職種関係なく、飛べないけど私たちに何ができるのだろうと一人一人が考えてくれ、意見を出し合ったりしました。チーム一丸となったことで乗り越えられたのではないかと改めて今、感じています」 - 同期間中は、普段できなかった地上での広報活動、東日本大震災復興支援活動の一環として、甚大な被害を受けた宮城県石巻市立大川小学校を慰霊訪問するなどの活動を行った。
- ファンの温かい声に
ブルーの存在の力を実感 - また、飛行隊長付として昨年4月1日に着任した遠渡2佐にとっても波乱のシーズンインとなった。
遠渡 「着任したその週から早速飛べなくなってしまいました。私はまだ訓練に入っていなかったため、維持する技量がなかったと言うのが正直なところです。展示飛行に関しては、尾道港開港850年記念での展示(昨年7月27日)がシーズン最初のイベントとなり、私にとって初めてのファンサービスの機会となりました。ファンの方の多さに驚くとともに『待ってるよ』などと温かい言葉もかけていただき、自分たちが思っている以上にブルーインパルスの存在が皆さんの力の源になっているのだと感じることができました」 - この春、遠渡2佐の着任から1年を迎えた。「他の飛行隊と違って、国民の皆さんに仕事の成果を見せることができるので、やりがいを感じやすいですね」とブルーインパルスならではの活動に魅力を感じているようだ。
ブリーフィングを行う遠渡2佐(右)。部隊の雰囲気作りが、結果として上空の安全につながると話す
- 創設60周年、伝統の継承と
更なる高みへの挑戦 - 2020年はブルーインパルスが創設60周年を迎え、加えて本来であれば東京五輪開催となる記念の年でもあった。今シーズンはどのようなことに注力していくのか、次期隊長となる遠渡2佐に意気込みを聞いた。
遠渡 「今まで通り、伝統的に受け継がれてきた技量や技術を絶やさないことを心掛けたいと思っています。その上で、今年のチームらしさを追求していきたいですね。展示飛行の部分は決まったことを正確に実施することが大事ですので、それ以外のファンサービスなどの広報活動を工夫してみたいと思います」 - 昨年は、中学生以下の子供が優先的にファンサービスの列に並ぶことができる「ファストパス」などの取り組みも実施したが、他のファンへの対応が後手に回ってしまうなど課題も残ったと言う。引き続き試行錯誤していくと共に、フライトに差し支えのない範囲で、よりファンとの交流を増やしていくことを目指す。
- 隊長の背中から学んだ
安全への意識 - 一方、伝統を継承していく立場として福田隊長は遠渡2佐への絶大な信頼を語った。
福田 「遠渡2佐は指揮官としても素晴らしい素質を持っていると思います。本人には恥ずかしくて直接は言わないですけどね(笑)。今シーズンも、大変な時期の中でのスタートとなりますが、しっかりと任せられる人なので安心しています。特に受け継いでもらいたい点としては、このチームの雰囲気作りですかね。ブルーインパルスの飛行はどうしても危険が伴いますので、しっかりとメンバーが一人一人意見の言える環境は、引き続き大切にしてもらいたいと思います。私のやっていたことを踏襲する必要はなくて、彼は彼なりに指揮官としてブルーインパルスを築いてほしいです」
遠渡 「大切にしていきたいことは福田隊長と変わりません。安全なフライトを行うことはもちろん、チーム内のコミュニケーションも大切にしたいです。私たちのチームには、若い人もいれば、ある程度経験を積んだメンバーもいる。技量も様々な中、同じ内容のフライトを行うため、人的なコミュニケーションエラーがあってはなりません。そのため、積極的に発言しやすい空気を作ることは大事で、その努力は上空で生きてきます」 - チームとしてのまとまりはもちろん、メンバー同士が互いの人間性を理解することが上空での安全に繋がると、1年間福田隊長の背中を見てより強く感じられたのではないだろうか。
- ファンに支えられた3年間に
感謝を込めて - 福田隊長の任期の中でも特に大変だった昨シーズン。飛行できる機体が0機から始まり、3月の聖火到着式では12機が揃った。歴代でも例を見ないことだ。そのような時期を乗り越えてきた陰には、ファンの支えがあったと言う。最後に、福田隊長、遠渡2佐のそれぞれから熱いメッセージをいただいた。
福田 「任期中の3年間いろんな時期がありました。特に大変だった昨シーズンも今のメンバーと一緒に仕事できたからこそ、乗り越えられたと思っています。そして何よりも、飛べない期間もずっと応援してくれたファンの皆さんには心から感謝しており頭が下がる思いです。我々は、やれることをやろうと少ない機数での展示飛行をした時期がありましたが、それに対して励ましのお手紙や声を聞くことで、進むべき方向に自信を持つことができました。」
遠渡 「今シーズンも、私たちにしかできない一糸乱れぬ飛行を見て楽しんで欲しいですね。実は私自身も、空を眺めたり、航空機を見ることが大好きで、その瞬間は今でも心踊るものがあります。暗いニュースが多い昨今ですが、こんな時こそ私たちがフライトすることで元気をお届けできればと思っています」
一層絆を深め、挑戦を続けるブルーインパルスから今年も目が離せない!